自己紹介
東京国際工科専門職大学デジタルエンタテインメント学科CGアニメーションコース三年の中島諒と申します。現在大学ではテクニカルアーティストを目指して勉強しています。
今回、書籍『挫折させないHoudiniドリル 作例データと解説動画でくりかえしたたきこむ』でHoudiniを基礎から勉強しましたので、その書評を書かせていただきます。
概要
本書は全三章で構成されており、Houdiniの無料版の導入方法から基本操作、実践的な手法まで丁寧に解説しています。この書籍は、初学者が挫折しないための工夫が散りばめられており、Houdiniを今から勉強してみたい方に非常にお勧めできる内容となっています。以下で各章について詳しく説明します。
一章
この章は「準備編」と題されており、Houdini無料版のインストール方法、ユーザーインターフェースの説明、今後の作業がしやすくなるデスクトップの変更方法が解説されています。この章から本書の特徴である解説動画が登場します。文字だけの説明ではわかりにくい操作手順を、Born Digital公式サイトから動画をダウンロードして実際に見ることができます。実際に書籍で勉強する中で、この解説動画の存在は非常にありがたいものでした。
二章
この章は「基本操作編」と題されており、Houdiniの基礎が網羅されています。この章は全339ページ中238ページを占めており、本書において非常に大きな比重が置かれています。初学者でも挫折しにくい丁寧な解説が施されている章だと感じました。
特に解説動画とサンプルファイルは非常にわかりやすく、本書と合わせて見ることでより理解度が深まると感じました。
三章
この章は「考える(考え続ける)訓練編」と題されており、実際のプロシージャルモデリングを通して応用力をつけることができます。複数のアプローチを比較し、なぜそのようなアプローチになるのか、なぜ他のアプローチでは駄目なのかといったロジックを重視した構成になっています。また、初めから複雑な仕組みを作るのではなく、段階的に機能を改造していくという流れについても解説しています。あとから機能を追加できるHoudiniの特徴を押さえた内容になっています。
この章から、ただ真似るだけではなく、順序立てて考えながら作ることの大切さを感じさせられました。
以下の画像①~⑤は実際に本書を読みながら作成したテキストモーフアニメーションです。いきなり複雑な仕組みを作るのではなく、段階的に機能を改造しています。
画像①
これはこのチュートリアルで作成した四つのジオメトリーです。この中に画像②~⑤の内容が入っています。
画像②
これは一番始めのシンプルな実装(SIMPLE)です。この状態では48フレームにすべてのポイントが移動し、120フレームですべてのポイントが停止するため、あまり自然なアニメーションとは言えません。具体的にやりたいことはモーフィングの完了タイミングをポイントごとにずらしたいというオーダーです。ここからそれを実現するための実装を行っていきます。
画像③
次にこれはAttribute Wrangleによる実装(USE_VEX_CH)です。Blend ShapesSOPをAttribute WrangleSOPで書き換えました。アニメーション自体は画像②と変わっていませんが、VEX(Houdini内部のプログラミング言語)を用いることで、より柔軟な処理が行えるようになります。
画像④
次にアトリビュートを利用した実装(USE_VEX_ATTRIBUTE)です。ここでは次の画像⑤で行う実装のための下準備をしています。
画像⑤
最後にアニメーションの完成(USE_VEX_RANDOM_OFFSET)です。画像④で追加したbiasアトリビュートをポイントごとにずらす処理を実装しました。これによりモーフィングの完了タイミングをポイントごとにずらしたいというオーダーを実現することができました。
さいごに
私は本書を読む以前よりHoudiniを勉強していましたが、かなり取っ付きにくく難しいソフトだという印象を持っていました。しかし、本書を通じて1から丁寧に紐解いていくと、自分がHoudiniに対して必要以上に難しさを感じていたことに気づかされました。本書は丁寧な解説で読みやすく、自分のペースで進めることができる素晴らしい書籍だと思います。タイトルにもあるように、挫折させないという思いが詰まっていると感じました。私自身、解説動画や巻末の索引には何度も助けられました。
こういった、難しそうだなという抵抗感を減らすことができる本書は、Houdiniをこれから勉強してみたい、興味があるという方には特にお勧めします。