TGS 2024 スカラーシップ体験レポート⑤中村陽太

神戸芸術工科大学 デジタルクリエーション2年 中村陽太です。
今回IGDA JAPAN様のスカラーシップに採択していただき、東京ゲームショウ2024に4日間、出展者として参加しました。

TGS2024はゲームの出展数も来場者数も過去最大規模で、大盛況でした。この4日間で私が体験したことをお伝えします。

出展作品

「Slitherise(スリザーライズ)」というゲームを展示しました。
このゲームは、蛇のロボットを操って、暗くて神秘的な世界を這い上がっていく物理2Dアクションゲームです。

プレイヤーに与えたい体験は、思うように動かないものを操れるようになる快感と、それを操ってギミックやパズルを乗り越える楽しさです。その途中で、神秘的な世界観やストーリーも楽しんでもらいたいと考えています。

拘りはダークなアートスタイルとシンプルな操作から表れる様々な効果です。インスピレーションを受けた作品は「Limbo」「Getting Over It」です。

個人製作で、今のところ開発期間は約半年です。イベントへの出展は3回目です。

応募したきっかけ

私がTGSスカラーシップを知ったのは、7月に東京ゲームダンジョン外伝で人生初出展した時に、IGDA JAPANの鈴木英仁さんと出会い、この企画を教えてもらったことがきっかけです。

当時TGS出展はまだ先の目標だったのですが、できることは全部やろうと思っていたのと、もともとTGSには行くつもりで、せっかくなら自分のゲームを出展できたら最高だと思い応募しました。

東京ゲームショウに向けての準備

7, 8月に他の用事でこのゲームの開発に2週間ほど間が空いていました。久しぶりにunityエディタを開くと、とっても散らかっていました。

夏休み期間の後半で、ステージの地形を全て、装飾のスプライトを半分作り直し、ギミックを見直して色々増設、BGMを追加で作ってからTGS に挑みました。

展示をして

東京ゲームショウという大イベントでどれだけの人が自分のゲームを遊んでくれるか予想がつきませんでした。結果は、メインと補助係を合わせて自分がブースにいる時は、呼び込みでチラシ配りしていた時間が3割、試遊してもらっている時間は7割くらいだったと感じています。

チラシ配りは初めての経験でした。1つのブースを0.1秒で見て通り過ぎていく客にどれだけ興味を持ってもらうかの時間の取り合いのシビアさを実感しました。小野さんの「面白いゲームを出すのは結構当たり前で、あとは宣伝力の戦い」という言葉が心に残りました。

私が他のブースを回っている時もちょこちょこ「Slitherise」を遊んでもらっていたと聞いて嬉しかったです。ポスターを見てカッコいいと言ってもらったことがあり、ビジュアル面は自信が持てました。

試遊してもらって

ビジネスデーはゲーム業界のプロの方に多く来ていただき、ゲームの内容がより良くなるようなアドバイスをたくさんいただきました。帰ったらする事リストがどんどん増えていきました。

一般公開日は実際にゲームを遊んでもらうターゲット客の素の意見や反応を見られるので、これもとても勉強になりました。多い時は常に試遊が埋まっている状態でした。中にはSNSを見て来てくださった人がいて、とても嬉しかったです。宣伝の効果が実際に出てきて、広告の大切さを改めて感じました。もっと力を入れようと思います。

ゲームの反省

レベルデザイン

難易度の波を作ったつもりが挫折ポイントになっている部分があったり、シンプルな操作だからと言ってチュートリアルがほぼなかったり、不親切な部分が多かったと反省しています。操作の説明はシンプルだが動きは独特で、慣れるまでに時間がかかるので、初見の感覚を大切にしなければいけないと感じました。

わかりにくさ

最初にゲームの目的をプレイヤーに見せることがなかったので、何をしたらいいのかわかりにくいという意見や、進む方向が分からないという意見がありました。世界観は壊さないように、もう少し親切に作ろうと思います。

スカラーと話して

私はずっと個人制作をしていて、ゲームそのものを作っている人がまだ身近には居ないので、同年代のいろんな環境にいるクリエイターと話す経験はとても刺激になりました。ゲーム開発に関する事で共感する事もあれば、それぞれの考え方があることもあって面白かったです。あまり自分はしたことがないチーム開発の話も聞けたのはよかったです。スカラー同士で話している時間は得るものばかりでした。これを糧にさらに躍進していきます。

他のブースを試遊して

特に心に残った作品を1つ紹介します。SOWNの作品で、「Esophaguys」というゲームです。伸ばした首を振り回したり、噛みついたりして進んでいく、パーティーアクションゲームです。SOWNの見学でとても気になったので後日遊びに行きました。とても面白かったです。操作は慣れれば結構シンプルで、長い首を使った工夫した動きでステージを攻略していくゲームです。ステージのレベルデザインが良くできていて、流れるように様々な動きを習得できました。自分のゲームでも序盤はこのような体験をしてもらいたいので、この試遊はとても参考になりました。

このゲームの重要部分である「伸びる首」と、私のゲーム「Slitherise」の蛇の体の部分が似通っていて、とても親近感が湧きました。そしてこのゲームはSOWNのグランプリに選ばれていて、自分のゲームも結構良い線なのではと自信につながりました。

東京ゲームショウを終えて

TGSスカラーシップでは、4日間で壮大な経験をすることができました。ゲームのフィードバックはもちろん、展示以外の経験にも多くの学びがありました。これら活かしてこれからもゲームをつくり、イベントにも積極的に露出していこうと思います。

この4日間の経験はこれからの人生で役に立つものになると確信しています。学生ゲームクリエイターの方は応募することをお勧めします。

「Slitherise」Steamページ公開しています

→ https://store.steampowered.com/app/3191770/Slitherise/