TGS 2024 スカラーシップ体験レポート②野々村賢人

大阪電気通信大学総合情報学部デジタルゲーム学科2年の野々村賢人と申します。

今回私は4月から7月にかけて開催されたBitSummitGameJamで制作した、敵の攻撃を跳ね返しながら進む2Dアクションゲーム「Neon Bounds」のチームメンバー代表として、スカラーシップに応募しました。その結果採用にいたり、スカラー生として東京ゲームショウ2024に参加しました。

今回私が初めて東京ゲームショウというイベントに参加して、出展者側でどのようなことを感じたのか、他の出展されているゲームを試遊してどのようなことを感じたのか、また展示を見てどのような影響を受けたのか、体験レポートとしてまとめさせていただきます。

今年の東京ゲームショウは総来場者数約27万人という歴代2位の来場者を記録し、大盛況の結果となりました。

ビジネスデー1日目は私の展示の当番が無く、会場を見て回る日となりました。まずは同じホールにあるインディーゲームコーナーを拝見しました。その中で私が素晴らしいゲームデザインをしているなと感じたゲームを一つ紹介します。DonutsHunterの「Motion Rec」という作品です。

こちらの作品は「動きを記録して再生する」というコンセプトで、プレイヤーはキャラクターの動きを記録し、それを用いてステージのギミックを攻略し進んでいくパズルアクションゲームです。操作はコントローラーを用いた非常にシンプルなもので遊びやすい印象でした。そしてこのゲームで素晴らしいと感じたのがステージデザインの部分です。プレイヤーの動きを記録するというシステム上、どんな動きを記録するかを考えながらプレイするのですが、ステージの設計でプレイヤーが自然にどのような動きを記録すればいいかを気付かせるような作り方がされており、そのステージデザインのレベルの高さに感動しました。

会場を見て回った際にはどこを見ても情報の嵐で、こんなにワクワクするイベントがあるのかと驚きました。 様々な企業が自社の特徴をふんだんに押し出したブースで思わず立ち止まって眺めてしまうような素晴らしいものでした。

ビジネスデー2日目は展示の当番があったので展示後、会場を回りました。展示では私がブースにいる間に6名の方に遊んでいただきました。私たちのゲームはネオン街が世界観設定としてあり、全体的に暗いカラーリングになっているのですが、会場で展示するときにはその暗さがステージの見づらさにつながってしまい、プレイヤーのゲーム体験を下げてしまう結果になりました。 プレイした方からは「オブジェクトのアウトラインを描くと見にくさが改善されるよ」と的確なアドバイスをいただきました。

この日の夜には「センス・オブ・ワンダーナイト」という、インディーゲームの無料出展企画「Selected Indie80」のなかから最終選考で選ばれた8作品がプレゼンテーションを行い、審査員がそれらの作品を分野に分かれた賞に選ぶというイベントを観覧しました。どの作品も独創的な部分があり、ゲームというものはここまで自由でいいのかと感銘を受けました。

3日目からは一般公開日となり、数多くの一般のお客様が来られました。一般日の展示では操作性の部分で多数の意見をいただきました。コントローラーの持ち方が普段プレイするゲームとは違い、ジャンプボタンが左トリガーで盾の操作に右スティックを常に動かしておかなければならないなど、操作に慣れが必要で難しいと指摘されました。操作で難しさがあるとプレイする人はゲームへのモチベーションが下がってしまいます。他の参加者のゲームを見ていても、操作はなるべく簡単なものにするという工夫が見られ、この点は少しでも改善しなければいけないと感じました。ゲームの難易度に関しては難しいという意見がほとんどだったのですが、ただ理不尽に難しいのではなく、何度もトライしたくなるような病みつきになる難易度であるとお客さんに言っていただいたことが、目指していたゲームデザインを理解していただいていると感じてとてもうれしかったです。

最終日となる4日目は前日を超えるお客さんにゲームをプレイしていただきました。そんなお客さんから「楽しかった」「面白かった」と実際にお声をいただいて本当にうれしかったです。なかには「クリアまで行けなくて悔しい」という声もありまだまだ万人にプレイしていただくには程遠いなと感じる部分もありました。

4日間の展示を通して1つ気づいたことがあります。それはユーザーがゲームをプレイする要因にほとんどの人がゲーム内容よりもビジュアル面で判断していることが多いということです。ブースでお客さんの対応をしているときに「あのゲームキャラクターが可愛いのでプレイしてもいいですか」や「猫が好きなので猫のゲームをプレイしたいのですが」、「あの不思議/シュールなイラストのゲームプレイしてみたいです」とおっしゃる方が多かったです。このことからユーザーにゲームをまず手に取ってもらうには何かしらユーザーに興味を持ってもらう要素をビジュアルに組み込む必要があるということです。このことを視野に入れて次の制作活動を行っていくべきであると感じました。

今回人生で初めて東京ゲームショウに参加させていただいたことは、私の知見を大いに広げるものであり、素晴らしい体験になりました。ここで受けた多くのインスピレーションと人を楽しませたという経験を糧に、これからも制作活動に取り組んでいこうと思います。