CEDEC 2024 スカラーシップ体験レポート③戸沢直誠

CEDEC2024スカラーシップに参加させていただきました、名古屋工学院専門学校 ゲームCG学科 戸沢直誠です。専門学校で3DCGを学びながら、VR機器を使ったゲーム開発にも取り組んでいます。将来はテクニカルアーティストになることを目指して日々勉強しています。

印象的だったセッション

今回視聴したセッションの中で、特に印象に残ったセッションを紹介します。

UnityのTimelineを活用したライブ制作のこだわり~「学園アイドルマスター」制作事例~

「学園アイドルマスター」のライブ演出の制作事例について紹介されていました。ライブ演出におけるリアリティと魅力を追求する姿勢に、とても驚きました。キャラクター一人ひとりの個性を分析し、言語化することがリアリティのあるライブシーンの制作において重要なことであると感じました。キャラクターをただ動かすのではなく、そのキャラクターの特性を理解し、動きや表情に反映させることで、プレイヤーが感情移入できることを学びました。「ライブ感」を出すための技術的な工夫にも驚きました。時間の経過による汗の表現やカメラアピールなど、細部にこだわることで、本物のライブを見ているような臨場感が生まれていることに感銘を受けました。

高品質なフォトグラメトリデータを取得するためのハードウェア&ソフトウェア開発

Cygamesのスキャンスタジオが行っている高品質なフォトグラメトリデータの取得方法が紹介されていました。フォトグラメトリに使用する画像には均一な照明環境が重要であり、そのために市販の撮影機材などを改造した撮影装置を開発したという話が印象的でした。

また、撮影した画像データに対するソフトウェアによる後処理手順に関する具体的な例について触れられていました。これらの技術によってフォトグラメトリデータの品質が大きく向上し、よりリアルな3Dモデルを効率的に作成できると知り、とても参考になりました。丁度自主制作の中でフォトグラメトリについて研究をしていたため、講演で得た情報は制作の中で役立つと感じています。

漫画制作における生成AI活用の現状 2024夏

今年のCEDECでは生成AIに関するセッションが多く行われていました。この講演では、ストーリーや設定、キャラクターデザイン、背景など、漫画制作のさまざまな工程でAIがどのように使われているかに関する事例について紹介されていました。

従来の背景を作る作業は、資料を集めたり、構図を考えたりしたうえで、たくさんの工程を経て描かれているため、作家にとっては大変な負担になっていましたが、背景制作に画像生成AIを使用したことにより、作家の負担を軽減でき、さらに表現の幅を広げる可能性があると感じました。しかし、生成AIによって作られた作画が必ずしも作家の意図通りになるわけではなく、既存の作画スタイルとの違和感など、解決すべき問題も残っているようです。それらの問題をどう解決して生成AIを活用していくかを考えることが、現在の生成AIを効果的に活用するための鍵となると、実際の活用事例をみて感じました。

AIが人の仕事を奪うという意見を度々耳にしますが、いくつかの生成AIに関するセッションを聞いて、そう考える必要はないと思うようになりました。むしろAIは制作を行う人の効率を向上させるための道具として、役立つ存在になると感じました。講演では、AIが漫画家にとって脅威ではなく、むしろ創作活動をサポートする頼もしいパートナーになり得ると述べており、とても興味深かったです。

CEDECの参加を通じて

愛知県に住む学生として、首都圏で開催される多くのイベントに現地参加するのは難しいのが実情です。しかし、CEDECは以前から参加したいと思っていたイベントでした。今回、スカラーシップ生としてCEDECに参加できたことは、非常に貴重な経験となりました。

私はテクニカルアーティストになることを目指していましたが、テクニカルアーティストという職業について、ただ単に3DCGやプログラミングの専門知識を使ってゲーム開発の技術的な問題を解決する人だと漠然とした認識でいました。しかし、講演を通じて、テクニカルアーティストの役割はそれだけではなく、開発チームと協力しながらアーティストの創造性とプログラマーの技術を融合させ、ゲームの世界をより魅力的にするための重要な存在であることに気づきました。

CEDECに参加したことで、テクニカルアーティストという職業への理解が深まり、今後の将来を具体的に考える上で非常に貴重な経験となりました。これからは、3DCGやプログラミングのスキルをさらに磨き、ゲーム開発の現場で必要な知識や経験を積んでいきたいです。