CEDEC 2024 スカラーシップ体験レポート②福山翔太

自己紹介

IGDA JapanのCEDEC2024スカラーシップに参加させていただきました。筑波大学大学院情報学学位プログラム博士前期課程1年の福山翔太と申します。

ゲーム業界での就職を目指していることに加え、研究活動の中でCEDiLでアーカイブされている過去のCEDECでのセッションを参考にする機会があり、実際に参加したいと考えていました。この度、スカラーシップを通して参加させていただいたので、その中での学びや印象的なセッションを共有したいと思います。

印象的だったセッション

感情の動きを辿ってみよう ~プレイヤージャーニーマップを用いたUX分析~

このセッションでは、ゲーム体験(UX)をどのように作ろうとしているのか、作ったのかを考える手法について紹介していました。

バトルやステージなどの単位ごとにプレイヤージャーニーマップを作成して分析を行います。そのために、コンテンツから引き起こされる感情や与えたい感情を分解して、それぞれをコンテンツのタイムラインごとにプロットします。これによって、開発メンバーが目指したいUXに対する共通認識を得ることができ、議論をより円滑に進めることができます。

作品の振り返りや、既に企画が出来ているものに対して用いていましたが、企画考案段階での可能性にも言及されていました。実際に使ってみようと感じるセッションでした。また、このセッションは社内のサークル的なものから始まっており、業務外のところでもより良いものを作ろうという熱意を感じ、自分もそうありたいと思わされました。

プレイヤーの「上手さ」とゲームの「難しさ」を分析する手法とレベル自動生成への応用

ゲームがプレイヤーに要求する技能は様々なものがあり、Easy,Normal,Hardなどの画一的な既存の難易度調整では、本当の意味でプレイヤーの上手さに合った難易度とは言えないので改善しようという試みです。

プレイヤーのゲームプレイから、アイテムを拾う、敵を倒す、攻撃を避けるなどの個々の能力を評価し、その評価値から難易度を調整するデモを紹介しており、手法の意図に沿ったゲーム展開となっていました。一方で、今後の課題として仕様変更への対応が挙げられていました。現状では、ゲーム内容に応じたアルゴリズムが要求され、仕様変更のたびに作り直す必要があります。

セッション内でのデモでは手法の意図には沿っていましたが、ゲームデザインの意図通りの難易度調整にできるかという点では難しいように感じました。職人芸のような調整は難しくとも、試作段階で遊びの感覚を掴むためには非常に便利で時間短縮になると思いました。逆に、生成された難易度であることを前提としたコンテンツを遊んでみたいとも思います。

ゲームUIラウンドテーブル

ゲームUIデザイナーから関心や関わっている人が集まって、ゲームUIの課題についてディスカッションを行うセッションです。

業務領域が広く曖昧になりがちなUIデザイナーという職種に対して、現場が抱えている課題や課題解決の糸口について聞くことができました。

UIデザインという領域に関心を持っていたものの、実際に何に困っていて、どう解決を試みているのかは書籍や想像の範囲に留まっていました。モデルケースとして、いくつかの事例を知れたことは今後の財産となるだろうと感じるセッションでした。

Developer’s Nightなどの交流会

CEDECではDeveloper’s Nightという公式の交流会が開かれており、スカラーシップ生も参加させていただきました。この他、最終日の夜には非公式ではありますが各職種や興味分野ごとに交流会が開催されています。

その中で、印象的だったセッションのスピーカーの方や関心のある分野で働いている方など、多くの方々と交流させていただくことで、学生では持ち得ない様々な考え方を知ることができました。

また、こうした交流会では面識の無い人に話しかけ続けるという状況になるため、コミュニケーション能力や物怖じしないことが要求されます。社会に出た後に求められることだと思うので、学生のうちに経験できる非常に良い環境でもあると思います。

CEDEC 2024を経て

専門学校と比較し、大学は深く知識を身に着けられる一方で、ゲーム制作や業界について知る手段や機会は限定的です。業界の中でも意欲的な方が集まる場でのセッションの受講や交流することで、業界への知識が増えて視野が広がり続けた期間だったと思います。

最後に、CEDECを通して沢山の方が親身に接していただき、後進の育成や業界の発展を真剣に考えていることを感じました。今回のスカラーシップ生一同のレポートも来年参加される方のきっかけとなれば幸いです。