CEDEC 2024 スカラーシップ体験レポート①安部純正

この度CEDEC 2024 スカラーシップに参加させていただきました、ゲームプログラマを目指している安部純正です。東京国際工科専門職大学 工科学部 デジタルエンタテインメント学科に所属する二年生です。主に UNITY C# C/C++を用いたゲーム開発をしています。

印象的だったセッションと得た学び

プレイヤーの「上手さ」とゲームの「難しさ」を分析する手法とレベル自動生成への応用

通常のゲームでは、難易度は画一的です。本講演では、プレイヤーを分析することで能力毎に難易度調整を行う実例を体験しました。プレイヤーにとって最適な調整を施すことによって、より良いゲーム体験を提供できることを実感しました。一秒もかからない高速な動的レベル生成には非常に驚かされました。ゲームのシステムを根本から変えるような、技術の躍進を体験することができました。

マイクロソフトの AI でゲーム開発の未来を切り拓く ~最新 AI ツール Copilot による開発効率化とスクウェア・エニックスゲームエンジンにおける Azure OpenAI 活用最新事例~

マイクロソフトの GitHub Copilot を用いたプログラムの解説、プログラムのリファクタリング、Git のコミットに関するコメントの自動記述、これらのような作業効率化につながる機能を学びました。その後、株式会社スクウェア・エニックス内での社内データを学習した AI によるゲーム開発促進の実例が紹介されました。AI の有用性を認めながら、すべてを任せきりにしないように注意を払う必要があるとの忌憚のない話が展開されました。現在の AI の利点は、作業の効率化によりクリエイティブな時間を確保することと学びました。

ゼルダの伝説  ティアーズ オブ ザ キングダム』の世界をつなぐ技術 ~空、地上、地底、そして制作もシームレスに~

空、地上、地底をシームレスに移動するゲーム体験。それを可能にする際に発生する技術課題の解決について学びました。多くの工夫の中で二つのことを簡潔に紹介します。

三次元世界におけるデータストリーミングや LoD を考える必要性

八分木のデータ構造を利用し、LoD のレベルやモーフィング補完率を決定します。その際に、隣接チャンクの読み込み状況やカメラからの距離も踏まえます。

ロードの最適化

データのロードが間に合わない問題がありました。問題を解決するためには状況を分析し、ボトルネックへの対処を図ります。プロファイラーを用いてボトルネックを特定し、必要なデータを効率よくロードします。プレイヤーの位置に応じて、必要な3D モデルを徹底的に洗い出すことで、ロードを最適化します。この作業には度肝を抜かれました。

以上の講演を受けて、自身の技量と知識を伸ばしていく必要性を強く感じました。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のスクラビルドができるまで~準備のために準備する~

様々な思考フローを学びました。まず本質を理解することが重要です。例として『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のスクラビルドという機能の本質は「絵が機能を表す」です。問題解決のためには、問題を分解し、優先順位を明確化します。具体的にはまず、構想を希望・願望(ウィッシュリスト)します。次に、不可欠な仕様(プランリスト)に分解します。その後、検証を繰り返して「やらない事」を決めます。講演を通して、シンプルに物事を分解することの重要性を実感しました。ゲーム開発インフラ部門など様々な部署が妥協せず、問題解決の手段を模索する実力の高さにも目を奪われました。

明日から使える!海外文献に頻出する Level Design 用語の紹介

レベルデザインに関する手法、理論を学びました。体験を区切る最小の要素や緊張曲線を元に設計された簡易なレベルの図「レベルダイアグラム」など、プレイヤーに効率的に楽しさを提供でき、直ちに使える学びを多く得ました。一番驚いたのは、プレイヤーを導く手段として使われた、プレイヤーの目を引く小さなオブジェクトである「パンくず」についてです。活用例として、ゲーム『God Of War』が紹介されました。ゲーム内では計算されて配置された、「白樺の木」「灯り」などの「パンくず」により、無意識的に次に向かうべき方向がわかるレベルが作成されていたことを体験しました。レベルデザイナの工夫に魅了されます。また、ゲームを遊ぶ際、制作する際の視点が変わりました。

このように、自分の興味があるエンジニア領域以外の講演からも、思考フローなど多くの学びを得ました。

最後に

CEDEC 2024 スカラーシップを通じて多くのことを学び、大変有意義な時間を過ごすことができました。自分の興味がある領域以外の講演も積極的に受講すべきであると学びました。先進的な技術を理解し、実践できるようにするために、自身の技量と知識を伸ばし続ける必要があると学びました。加えて、多くの人々の貢献によって成立するCEDECを通して、開発に携わる人たちが協調し合うことの重要性を強く実感しました。この経験を活かし、これからのゲーム開発に勤しもうと考えます。