神奈川工科大学情報学部情報メディア学科4年の山田悠貴です。今回、IGDA日本様のスカラーシップにて、東京ゲームショウ2023に出展させていただきました。
昨年のTGSは久しぶりの開催で、コロナ渦の影響もあり、入場制限をしいての開催となりました。しかし今年は入場制限がなくなり、昨年の約二倍の人が会場に訪れ、賑わいました。TGSは4日間続き、自身の展示を行うと共に、大手ゲーム会社からインディゲームまで、またスマホ、コンシューマー、VR等多様なジャンルの展示を見学・体験することができました。この体験レポートでは、自身の展示の4日間の振り返りと、そこから学んだことを、TGSで印象に残った展示と照らし合わせてお伝えいたします。
初めに、私の制作したゲームはVRボードゲームです。将棋やチェスのような盤上ゲームによる戦略要素と、駒同士の戦闘を実際にプレイヤーが行う戦闘要素が組み合わさったゲームです。このゲームは、制作当初からMetaStoreでの発売を決めていました。そのため、チュートリアルや最低限のゲーム説明は用意されているものの、TGSの展示では、初めてVRに触る人にも短い時間でゲームを理解して頂く必要がありました。そのため、事前に母親や友人などのVR未経験者に遊んでもらい、貰った意見を元にゲーム説明用パワーポイントを作成しました。
結果から言うと初日の展示は私の満足いくものではありませんでした。展示時間は想定では15分から25分であり、40分の展示で二人以上の方に遊んで頂くという目標自体は達成しました。しかし、パワーポイントは7ページもあり、更には説明前にPVも見せていたため、説明時間が長すぎました。更には、ゲーム内のプレイ時間も長く、お二人ともゲームをクリアまで遊んで頂くことは叶いませんでした。
初日の反省点として、説明が長すぎたこと、ゲームのテンポが遅くプレイ時間が長いことが挙げられました。その反省を踏まえ、帰宅後にゲームを急遽TGS向けに改造しました。主な変更点は、長かったゲームの準備フェイズの自動化やゲームスピードを上げるための駒のHPの減少などです。これにより、パワーポイントの枚数を減らし、全体の時間が短縮されると考えました。更には、スマホとのテザリングによるプレイ画面のミラーリングを行うことにしました。TGSでは1~8ホールの会場内でのテザリング機能の利用は禁止でしたが、幸いにも私の展示したIGDA日本ブースは9~11ホールに属しており、禁止事項には抵触しませんでした。
二日目も初日と同様にビジネスデイでしたが、午後から一般開放されたこともあり、私の15:40~16:20の展示時間は人が増えているように感じました。この日も変わらず遊ばれた方は二人でしたが、その内一人は最後まで遊んで頂けました。しかし、パワーポイントを減らすことで説明時間を短くしたものの、逆に説明不足となってしまい、分かりにくいとの指摘を受けました。本来は、説明不足な部分をミラーリングによる画面共有で把握し、適宜説明する予定でしたが、控室でのミラーリングには成功したものの、ブースでは回線が混雑してしまいミラーリングはできませんでした。結果として、ゲームのプレイ時間を早めることには成功しましたが、操作や進行で詰まってしまい、結果的に遊ぶ時間は変わりませんでした。
二日目の反省点として、ミラーリングができなかったこと、パワーポイントが分かりにくかったことが挙げられます。そこから、PCをミラーリングに集中できるようにするためと、パワーポイントだとプレイヤーが素早く理解しにくい点から、パワーポイントの説明資料を一枚の説明用ポップに纏めることにしました。また、インディコーナー出展者を対象としたインターナショナルパーティの疲れもあり、帰宅後はA4のポップを作成し、休息しました。
三日目、四日目は一般展示日で、来場者の多さに圧倒されました。特に4~6ホールは人が集中しており、移動もままなりませんでした。人の多さは私の展示ブースにも影響を及ぼし、PCのミラーリングは殆ど不可能で、時間帯によってはIGDA日本の展示ブースに列ができている光景も見られました。残念ながらミラーリングはできませんでしたが、作成した説明用ポップの効果は効果を発揮しました。遊んで頂いた二人の内、一人は10分程度でゲームをクリアできました。
四日目は、これまでの展示時間とは異なり、朝一の展示でした。開場時間は当初の10時から早まり、9時半の開場となりました。朝一なため多くの準備時間を取ることができ、人が少ないこともありミラーリングに成功しました。更には私の展示時間も70分となり、遊んで頂いた三人の方全員がゲームをクリアできました。また、英語圏の方も一人いましたが、ゲームは英語版も用意していたので、問題なくプレイして頂けました。最終日である四日目の展示は最も成功したと言え、私の理想に近い展示ができました。
今回のTGSでの展示で、苦労が多かったのは、ゲームが分かりにくく、遊びにくいことが原因です。最終的には良い展示ができましたが、それでも説明用ポップは必要でした。そこで、私がTGSで見た中で、ゲームの操作性や遊び方の伝えやすさが工夫されていたゲームを二つ紹介させて頂きます。
一つ目は神奈川工科大学の「声波万波」です。
このゲームは音声認識を利用して、声の大きさで波を操り、サーファーを動かして高得点を狙うゲームです。また、このゲームではタイトルで常にプレイ映像を流すことでゲーム内容を分かりやすくし、更にタイトルからゲームスタートするためには声を出す必要があるので、操作方法も分かりやすくなっています。正に遊びやすさ、分かりやすさを追求したゲームデザインと言えるでしょう。
もう一つは同じVRジャンルの「Akpala」です。
このゲームは音声認識、移動、ジャンプ等多くの操作を必要としますが、一つ一つの動作にしっかりとした説明と実践が組み込まれているのが印象的でした。TGSでは基本操作の習得と一部システムの紹介で終わるのですが、操作方法が分かりやすいので、ゲームの面白さに注目しやすかったです。
これらのゲームは、TGSに参加しなければ知ることのなかったものです。また、私の展示体験は大成功とは言えませんでしたが、多くの学びを得ることができ、TGSでしか得られない貴重な経験となりました。
最後に、今回のTGSスカラーシップ参加にあたり、様々なサポートをして下さった小野様と高橋様、IGDA日本の皆様、刺激と心強さになったスカラーシップメンバーの皆様、そして私のゲームを体験して下さった方々に心より感謝申し上げます。
この経験は、必ず今後の人生において役立つと確信しています。読んで下さった方の中で、CEDEC&TGSに参加したい学生の方やスカラーシップに興味のある学生の方は、是非積極的に応募してみてください。