ECCコンピュータ専門学校3年の渋谷和也です。
私はC++でゲームエンジンを作ることを目標に掲げ勉学に励んでいて、そのヒントを得られれば良いと思っていたのですが、実際は期待を大きく上回るほどに充実した、大きな学びが得られた三日間でした。
今回のCEDECはAAAタイトルを手掛けるスタジオからインディー系デペロッパーまで幅広いセッションが行われ、実に多彩な印象を抱きました。
最新のゲームで用いられた様々な工夫を図示し噛み砕いて発表してくれるセッションが多く、そのどれも講演者の熱意が伝わってくる素晴らしいものであったと思います。
一日目と三日目のはじめにあった基調講演はどちらも面白くて、生成AIのお話ではなんとなく知っているけれど理解できていなかったことを身近な概念になぞらえて解説してくださって非常に分かりやすかったです。いつしか人間と見分けがつかない存在になるかもしれない、そう思うと恐怖と希望とがない交ぜになった複雑な感情を抱きます。
シブサワ・コウさんのセッションは貫禄を感じる素晴らしいものでした。まさしく戦略的な立場から投げかける「野望を抱け」という言葉には感動を通り越してもう痺れてしまいました。
技術的なセッションでは、普段うかがい知ることの出来ない大作の開発環境について深く知ることが出来て非常に満足しています。
具体的なセッションを言いますと、フロム・ソフトウェアさんのデバッグメニューをURIに変換してコミュニケーションコストを下げる試みは私にとっては革新的でとても参考になりました。
私もデバッグメニューを作ろうとしたことは何度もあるのですが、デバッグするためにハードコーディングになったり、プランナーとの複雑な会話があったり、思い出深く、そしてこれからの大きな課題だと感じていた所でしたので、このセッションでは良い知見を得られたと思っています。
さらにスクウェア・エニックスさんのセッションでは、今年のCEDECでは恐らく時期が良かったのでしょう、FF16の開発環境についてお話されていて、FF16ではほとんど専用のツールが用いられているのが驚きでした。
普遍的で再利用可能なゲームエンジンではなく専用のツールという設計はむしろ他のほとんどの事をやってきたからこそ割り切った開発体制で稼働出来るのだろうなあと思う次第です。
一方でLuminous Engineで使用された数々の技術を紹介するセッションでは本当に最先端のものを取り入れられていて興奮するほどで、やはり全てをやろうとしているのではないか、と戦慄を覚えました。
個人的にはサウンド関連のセッションを楽しく見させてもらいました。近年フォーリーサウンドが注目されていることもあり、セッションの内容がフィールドワーク寄りのお話が多くてその小話がとても面白かったです。
そしてフォーリーサウンド系のみならず、今年のCEDECは嬉しいことにバリエーション豊かでバンダイナムコさんのインタラクティブミュージックの構造を取り扱ったセッションでは動画と一緒に分かりやすく解説してくださったりとか、Tango GameworksさんのHi-Fi RUSHを中心としたセッションではリズムアクションゲームを成立させるためにどのような取り組みがあったかなど見ていて楽しく、ためになるセッションばかりでした。
インディー系デペロッパーの発表は数が少なくはありましたが、Odencatさんのメグとばけものについてのセッションは大変興味深く、コンセプトをそのまま作品に投影して「勝った…後は作るだけ!」と確信を得て開発を始められるインディースタジオの力強さには感銘を受けました。
規模感だけならば私と同じようなゲームを開発されているはずで、実際にプロダクトとして仕上げた開発者の方々には憧憬と尊敬が募るばかりです。
総じてこのCEDECでは本当に多くの知識やアイデア、加えてインスピレーションを得ることができました。これを糧に努力し、さらに邁進します。