CEDEC 2023 スカラーシップ体験レポート③依田彩

ゲーム系の専門学校に入学する以前から、CEDECという催しが開催されていることは知っていました。非常に魅力的に思われたのですが、ゲームが大好きなだけの美術大学の学生であった私にとって、業界の関係者でもないのに参加するのはハードルが高いと感じて、参加することは諦めていました。

「いつかCEDECに参加する」ことが、長い間私の夢のひとつでした。今回多くの方々のサポートと、自分の努力によってそれが叶ったことを、非常に嬉しく思います。

今年のCEDECの開催テーマが「Resurrection in a New World.(新しい世界での復活)」である通り、最新のAI技術の活用事例の発表や今後の概観、また従来に比較してより業務的負荷の少ない開発環境の実現やコロナの影響下からコロナ後においてリモートワークでのコミュニケーションを円滑化するための取り組み、社員全体のメンタルヘルスに対する企業努力、ゲーム業界における女性社員のヘルスケア問題の啓発、昨今話題にのぼることの多い「多様性」についての具体的で科学的な示唆・啓発など、先端的な情報や知識を含んだセッションが多く見受けられ、現代社会全体が抱える問題にポジティブに向き合っていこうというゲーム業界のしなやかさ、強さのようなものを感じました。それはゲーム業界という、比較的若い産業の「楽しむこと」を大切にする風土がそうさせているのではないかとも思いました。

前述のとおり私は今回が初参加で、過去のCEDECとの比較はCEDiLなどに掲載されている情報などを鑑みても不十分にならざるを得ません。しかし今年のCEDECは十分に時事性を持ち、また社会的でありました。私の夢であり、希望であるゲーム業界が多くの問題や新しい技術、また価値観に対して積極的に対応していることが伺え、私としては大変に嬉しい機会になりました。懸命に楽しそうに働く実際の企業の方々の発表に触れて、とても明るい気持ちになることができたのです。

勿論、実際の企業様における最先端の技術的な知識を共有してもらえたことも、非常に為になりました。私はCGデザインの専攻の学生であるため、3DCG系ソフトウェアの最新のワークフローなどを拝見できたことで知識が深まり、大変勉強になりました。各社様の内製ツールの情報や、Marvelous DesignerやHoudiniといった、専門学校ではなかなか学ぶ機会のない最新のソフトウェアの実態・知識を具体的に授かることが出来たことも、とても勉強になりました。私の知識や経験では理解しきれない高度な内容も多々ありましたが、こういうソフトウェアがあって、こういう機能があって、こういうことができるんだよとご教示いただけたことは、大きな財産になりました。

多くのセッションを拝見した上で、私が一番印象に残ったのがDay2に講演された鹿野雄一先生の『3Dデジタル生物標本:ゲームに生物多様性のリアリティを!』です。私の直接の志望である3DCGに関係するフォトグラメトリーを利用した、生物標本の3Dデータ化における実際の方法や問題点への対処などについても非常に興味深く参考になりましたが、何より多様性という概念を正しく理解し、それを普及させていくことが大事であるという鹿野先生の言葉が重みを持って感じられました。エンターテイメント業界の直面する多様性への対応の不足や芸術的表現と多様性的価値観の間に起こっている摩擦や、そこから関連して表現の自由、あるいは商業芸術における表現の妥当性といった問題、文化や人権や、人間を含めたこの世界を尊重することとはどういうことなのか、比較的若い世代が触れるゲームという産業ができることは何なのか、グラフィックデザイナーとしてこれからも考え続けていきたいと思いました。

最後に、どうしてもお世話になった方々にお礼を述べたいと私は考えます。今回多くの知識を得たと同時に、多くの方々に助けて支えていただいて素晴らしい経験をすることができたからです。日頃から心身を慮ってくれ、また一生懸命にものを教えてくださる専門学校の先生方、今回貴重な機会をいただき大事な助言も多くいただいたIGDAの先生方、CEDECにて情熱のこもったセッションを講演してくださった多くの先輩方へ、どうかお礼を述べさせてください。

この度は素晴らしい機会をいただき、どうもありがとうございました。