京都芸術大学キャラクターデザイン学科キャラクターデザインコース二年生の水野優です。
今回、IGDA JAPAN 様のスカラーシップにて、東京ゲームショウ2022に出展させていただきました。
今回私が出展したゲームは、「Butterfly Loop Night」というゲームです。
本作は2022年度BitSummit X-Roadsにて、学生ゲームジャム大賞を受賞した作品で、私はプランナーとデザイナーを担当しました。
この学生ゲームジャムは、京都周辺の大学や専門学校の生徒がランダムでチーム編成され、オンライン上で、およそ3ヶ月間でひとつのゲームを制作するイベントです。制作後ビットサミットで展示を行い、審査員がプレイして大賞を決定する、という流れのもとで開催されました。
以上の通り私は、この夏に日本最大級のインディーゲームイベントと、日本最大級のゲームイベント、その両方に参加しました。
本レポートではこの度学んだこと、得られたことを、両者の違いも含めて述べられたらと思います。
今回特に学べたことは、大きく分けて2つです。
1つ目は展示デザインについて、2つ目はインディーゲームと大作ゲームの流行についてです。
まずは展示について述べたいと思います。
実のところ、ゲームをプレイした時間よりも展示デザインを見ていた時間のほうが長いかもしれません。それほどに目を引く、ユニークなものや最新の流行を取り入れたブースのデザインが多かったです。また、ゲームをプレイするまでの誘導デザインに目を奪われました。
ユニークなブースデザインについては、ULTRANOVA Entertainmentの「恋来い温泉物語VR」のブースが例に挙げられます。五右衛門風呂を模したパネルと、スモークによる煙により、ブースが露天風呂に様変わりしていました(参考:https://www.value-press.com/pressrelease/304770)
流行を取り入れたブースデザインについては、clusterのブースが例に挙げられます。2021年7月12日から開始された、新宿駅東口ビルの飛び出す巨大猫が映るディスプレイがSNSを中心に「バズった」のは記憶に新しいです。clusterのブースではその技術を応用し、clusterのアバターが飛び出し、こちらに手を振るムービーを放送していました。
ビットサミットと比較すると、ビットサミットの展示はシンプルで、「遊んでもらう」ことを第一にしたデザインでしたが、東京ゲームショウはどれだけ「つい見てしまう」ユニークなものや流行のものを取り入れ、いかに集客できるか、というデザインの意図から、多くのユーザーのまず「興味を引き」、「販売する」ことに注力していると感じました。
またゲームをプレイするまでの誘導デザインですが、特に面白いと感じたのは、ゲームをプレイするまで他の人のプレイ画面を「全く見せない」ブースと「プレイヤー込みで全て見せる」ブースとが両方あり、正反対の方法が同じ会場内で見られたたことです。
Metaは待ち時間が3時間を超え、SEGAは入場制限がかかるほど長蛇の列でしたが、ゲームの全貌はプレイ開始まで一切見ることができません。これは待つことでプレイ前に期待感を煽り、また「苦労して並んだからには面白いだろう」と考えてしまう、「認知的不協和」という人間の心理に基づいてデザインしたのだろうと考えられます。
反対にNexのように、ダンスリズムゲームの様なゲームは、プレイ中のプレイヤーごと全貌を見せているブースもありました。
「どう誘導すれば一番面白そうに見えるか」ということを一番に考えているからこそ、ゲームによって展示方法に違いが出るのだろうと考えました。
展示のことばかり特筆してしまいましたが、私が将来ゲーム業界でやりたいことは正に、以上に記述してきた「『何が面白いのか』をプレイヤーに伝えること」です。
例えどんなに面白いゲームを作ったとしても、その面白さがプレイヤーに伝わらなければ意味がありません。それをわかりやすくプレイヤーに伝えるために必要なものは、私たち芸術大学生が日々学んでいるデザインの力だと、私は考えています。
今回は「展示として面白さが分かりやすい」ことに注目して記述しましたが、これらはアナログゲームでもデジタルゲームでも応用できる点が多いです(認知的不協和の点など)。
今回学んだ考え方を、これからの制作に生かしたいです。
次に、インディーゲームと大作ゲームの流行について述べたいと思います。
こちらはあくまで自身がプレイした感想であり、根拠はないのですが、プレイしていただいたお客様の感想と一致していたため記述したいと思いました。
今回のゲームショウに展示されていた作品含め、昨今の大作ゲームは一様化してきたように感じました。流行りのオープンワールドやFPS、人狼のような「絶対に面白い」要素で組み合わされて制作されているような気がします。一方で、ビットサミットやゲームショウのインディーゲームコーナーでプレイできるゲームは、今まで見たこともない、新しいゲームシステムやデバイスの作品が多くありました。
私はゲームクリエイターとして、常に挑戦者であり続けたいと考えています。
前述した「デザインの力でゲームを面白くする」ことに加え、「誰も見たことのない遊びをつくる」ことができるクリエイターを目指したいと、改めて将来を考える機会となりました。
以上が、今回私が東京ゲームショウで特に学べた点になります。
また、プレイしてくださった方からフィードバックをいただけたり、メンバーと情報共有ができたりなど、他にも勉強になる点が本当に多くありました。
最後に、遊んでくださった皆様、このような学びの場を提供してくださったIGDA JAPAN様、支え合い助けてくれたスカラーシップのメンバーに、大きな感謝をお伝えしたいです。
4日間ありがとうございました!