現在、東京理科大学経営学部ビジネスエコノミクス学科に所属している服部壮一郎です。
大学では、データサイエンスを専攻しており、ゲーム×深層学習・機械学習(以下、A Iと総じて記述します)の分野で卒業研究を行っています。興味関心があることに加え、実際ゲーム業界でA Iがどのように活用されているかを理解することも理由にCEDECへの参加を決めました。今まで無料公開されているセッションやCEDiLで公開されている資料を見たことがあったのですが、実際参加してみると想像以上の発見・気づきがあり、多くの学びがありました。このレポートでは、スカラーシップとしてCEDECに参加して特に良かったことをまとめた2点、そして得られた知見をどう活かしていきたいかを書いていきます。
1つ目は、今のゲーム業界でA Iがどのように活用されているかを知れるだけではなく、資料を超えた登壇者の方の考え・情報を知ることができたことです。
セッションの検索機能でA I、M Lのキーワードに該当するセッションを全て参加したのですが、論文や個人開発で知っていた技術がどのようにゲーム開発に繋がるのかを知ることができました。セッションに参加する中で、「ゲーム制作効率化のためのAIによる画像認識・自然言語処理への取り組み」の講演では、自然言語処理モデルの「B E R T」を利用して、文章に誤字があるかどうか分類をされていたり、「明日から実践!強化学習で強い対戦ゲームAIを作ろう 〜だれでも試せる状態をめざして〜」の講演では、自分も使用経験のある「HandyRL」を使用した対戦相手、バランス調整のA Iの開発の仕方をご紹介されていたりしました。今まで優れた手法を知ることで、それをゲームに活かせると自分で仮説を立てることもあったのですが、企業でのゲーム開発で役立つかは全くわからない状況でした。そのため、どのセッションも具体的にどう活かされているのか知ることができてとても参考になりました。
また、登壇者の方と直接お話することができ、資料で紹介しきれなかった内容や近しいトピックへのご意見をお聞きすることができました。CEDECに参加することでできるコメント機能やWebミーティングで質問できる「Ask The Speaker」という機会があり、第一線で活躍する開発者である登壇者の方々に直接質問するができました。自分の質問への回答だけではなく、他の方の質問の回答からも登壇者の方の考えをお聞きできて良かったです。「ゲーム産業における対話キャラクター人工知能技術の発展」の「Ask The Speaker」では、業界でどういうことが起きているかを切り口に、メタバースにおける対話エージェントについてのご意見をしてくださりました。「メタバースでしか取得できないデータによる対話エージェントの可能性」を自分が仮説として持っていたので大変有難かったです。
2つ目は、横断的にゲーム開発の知識を得ることができたことです。
全ての分野のセッションに参加することができ、開催日の後でもタイムシフトで見ることができました。A Iに近い分野としてアニメーションに興味があるのですが、「実在感溢れるキャラクターを目指して ~ワンダ、トリコで培った巨大キャラクターアニメーション5つの法則~」の講演では、演技としてのアニメーションだけではなく、生物学的構造・物理の観点も持ったアニメーション表現についての説明があり、演技だけの視点を持っていた自分にとって、アニメーションへの解像度が高まるような学びがありました。以前エンジニアとしてデザイナー、プランナーの方とチーム開発をした際、相手の分野の理解があることでより良い提案ができると実感したのですが、それをきっかけに様々な分野についての理解を大切にしています。このセッションを通してアニメーターの方がどのように考えているのかの理解も進めることができ、CEDECで広い分野の知見を得ることのできる価値を実感しました。各日のCEDECの終わった時間帯にスカラーシップの参加者向けに交流会があったのですが、そこで違う分野について学んでいる他の学生の方々の意見も自分と立場が近しいこともあって参考になることが多かったです。A Iを活かすという観点でも、他の分野と横断的にA Iを活かす講演があるように、他の分野のセッション、交流会での情報から、A Iを活かすヒントになるようなものもありました。
今CEDECに参加して3週間ほど経っているのですが、以前よりゲーム開発の視点を持ってA Iについて学ぶことができていると実感しています。スカラーシップに参加して他の学生の方との交流を通して、自分のやりたいことをより理解することができました。また、自分のアウトプットの重要性も再確認しました。現在、卒業研究に加えて、東京大学の松尾研究室に所属して学んでいるのですが、このA Iについて多く触れることのできるこの機会と今回いただいた知見を活かし、卒業するまでに自分で制作したA Iを公開したいと考えています。また、ゲーム制作で自分は企画に近い立場でエンジニアを担うことが多いです。ゲームを面白くするために、他の方とコミュニケーションを取る中で、A Iが活かせれる部分を見極めることのできるエンジニアを目指したいと考えています。
最後に、今回のCEDECスカラーシップ参加にあたって、スカラーシップ全体の指揮をとって下さった小野さん、IGDA日本の皆様方、スカラーシップに参加している方々、参加者の交流会に参加して下さったゲーム会社の方々、三日間お世話になりました。大変貴重な経験をすることができました。誠にありがとうございました。
東京理科大学経営学部ビジネスエコノミクス学科4年 服部壮一郎