CEDEC2021スカラーシップ体験レポート⑥ 陳俊業 

東京工科大学大学院のバイオ・情報メディア研究科メディアサイエンス専攻に所属している陳俊業です。CEDECに参加するのは今回で3回目になりますが、1回目が対面、2回目がタイムシフト、今回はオンライン、3回とも違う体験で参加しました。ここでは、初めてオンラインのCEDECに参加した体験、インタラクティブミュージックに注目したセッションの感想を述べたいと思います。

私にとって今回が三回目のCEDECになりますが、今回はコロナウィルスの影響でいつものパシフィコ横浜ではなく、オンラインの開催になりました。講演と企業ブースでの対面の交流や、同じ物理空間での体験の共有などオンラインで再現できなかったものが多くありますが、ここではオンラインこその新しい体験を取り上げます。

まず、チャット機能は講演中のコミュニケーションを活性化しました。対面の頃では、講演中での講演者と参加者との交流は講演者からの問いかけ以外にほぼできなかったが、今回はチャット機能を使った参加者からの呟きが多く見られました。これによって、レギュラーセッションの中でも擬似パネルディスカッションのような環境が出来て、より多くの情報を参加者に与えることができました。さらに、チャット機能は参加者間の交流も可能にしました。対面では講演中での他の参加者との交流はプレゼンテーションの阻害になるが、今回では文字やスタンプでお互いの感想を共有することができました。

次に、インタラクティブミュージックの事例として、株式会社セガさん、株式会社バンダイナムコスタジオ、株式会社スクウェア・エニックスさんの3社が知見を共有していただきました。私は一つの研究者兼クリエイターとして、既存作品を分析し、中にある作曲技法や遷移手法などの知見を自分の作品や研究に生かすようにしています。しかし、インタラクティブミュージックの分析は膨大な量の考察が必要で、あらゆる可能性を考慮しながらプレイし、遷移条件やループポイントを探すことになります。なので、CEDECのような公式の場で制作者自身のプレゼンテーションを見ることができるのは非常にありがたいことです。

「コール&レスポンス!- FINAL FANTASY VII REMAKEインターグレード – 生ライブでプレイしてるかのような音楽演出と日英2言語対応プロセス」のセッションでは、ゲームプレイ動画とNUENDOでの実演を使って3種類の遷移とその作曲手法を紹介してくれました。気になったポイントとして、初の戦闘エンカウントではスムーズな遷移を使わないで、曲を最初から再生するという事例がありました。曲を最初から再生するのはごく普通のことでしたが、他の戦闘エンカウントではフィールド曲からスムーズに遷移するため、普通に曲を最初から再生するだけで特別感を出すことを可能にした。

「進化したSympathy:『PSO2:NGS』が奏でるインタラクティブミュージック」のセッションでは、進化した自社システムであるSympathy2.0での設定と実際のゲームプレイ動画を見せてくれました。ゲーム内時間、天候、高さ、エネミーのステータスや距離などと連動して変化する『PSO2:NGS』のBGMは、2020年CESAゲーム開発技術ロードマップである「インタラクティブミュージックの手法の細分化」の良い事例だと思いました。フィールドBGMのゲーム内時間を使った分単位での変化、マグナス山の高度による変化、ハルフィリア湖のプレイヤーの速度による変化などの事例は、遷移条件を細かく変えることで様々な表現を可能にした。これから、インタラクティブミュージックができる表現の可能性を見せてくれました。

最後に、今回のスカラーシップはコロナ禍の中にもかかわらず、様々な人と交流する機会ができて良い刺激と勉強になりました。また対面で会える日を楽しみにしています。