人工知能は禅によってフレーム問題を解決する/SIG-AI人工知能のための哲学塾 東洋哲学編 第五夜「人工知能と禅」レポート

フレーム問題の解決に向けて

「自我を持つ人工知能を開発するには、人工知能開発のベースとなった西洋哲学だけでは限界がある。東洋哲学の考えも取り込むべきだ」としてスタートした「人工知能のための哲学塾 東洋編」。荘子からはじまり、イスラム哲学、仏教、インド哲学と進んできた本セミナーも11月13日、いよいよ最終回を迎えました。「人工知能と禅」をテーマに掲げた第5回目では、おなじみSIG-AIの三宅陽一郎氏が、これまでの議論を巻き取りながら、「禅によって悟る人工知能」のビジョンについて解説しました。

大前提として、現在の人工知能が抱える問題とは何でしょうか。それは「問題を自分で設定できないこと」に行き着きます。いくら強化学習でアルファ碁が人間を打ち負かしたとしても、それは碁というゲームの中での最適解に過ぎず、新しいゲームを創り出すことはできないというわけです。実際、現在の大半の人工知能は「問題特化型」にすぎません。古今東西の人工知能研究者を悩まし続けてきたフレーム問題は、依然として高くそびえ立っています。

それでは、このフレーム問題はどのようにすれば解決できるのでしょうか? そして、フレーム問題の解決は「自我」とどのような関係性を持つのでしょうか。三宅氏の講演をまるっとまとめると、「人工知能がフレームを自力で設定するには、人工知能が『悟る』ことが重要」で、フレームを自力で設定できる力が、自我の獲得にもつながるということになります。なぜ、そのような結論になるのか。そもそも「悟る」とは何なのか。以下、講演内容をベースに紐解いていきましょう。

司会の犬飼博士氏(左)と三宅陽一郎氏(右)