CEDECスカラーシップレポート④田中利佳

今回のCEDECスカラーシップに参加させて頂きました、九州大学大学院デザインストラテジー専攻修士一年の田中利佳と申します。私は大学院で臨場感や、雰囲気が得られやすいというVRの特徴を生かした、ペットロス症候群を緩和するためのVRコンテンツについての研究と制作を行っています。私自身、将来的にゲーム業界の就職を希望しており、今回のCEDECスカラーシップを通じて、ゲーム制作におけるノウハウやクリエイターの方々のお話を伺ったり、自身が研究しているコンテンツに生かすことのできそうな知見を得たりすることができればと思い、参加させて頂きました。本レポートでは初日のスタジオツアーと三日間のCEDECによって得られた知見や感想について述べていきたいと思います。

まずスカラーシップ初日では、ジープラさん、サイバードさん、Aimingさんの三社に訪問させて頂き、各会社で取り組んでいることやゲーム制作に関するお話を聞きました。このスタジオツアーでは活躍なさっている現役クリエイターの方々と交流することができたり、ゲーム以外の分野でゲームを通じてどのようにメディア展開をしていったかということについてお話を伺ったりすることができました。

このスタジオツアーにおいて特に印象に残った点が二つあります。まず一つ目は、ゲーム会社の中でCGモデリングなどのサークルを作っているというお話を聞いたことです。会社内でサークルを作ることで、各自が趣味で制作したコンテンツやモデルなどをサークル内でワイワイしながら共有して遊んだり、改善などのアドバイスを得たりする場として機能し、それによって今後制作していくコンテンツのクオリティの向上に繋げることができると思うので、個人的にとても魅力的なことだなと感じました。

そして二つ目はプランナー、デザイナー、エンジニアなどの職種ごとのクリエイターの方々と直接お話を伺えたことです。私はデザイナーの方と交流をさせて頂き、ゲーム業界においてデザイナーとして入社するための水準や、その水準に達するためにデザイナーの方が学生時代にどのようなことに取り組んできたか、また自身が制作した作品のアドバイスをして頂きました。この交流によって、私のスキル不足を痛感すると共に、今後自分がどのような勉強を行っていくべきか、自分を見つめなおすきっかけにもなりました。

次に三日間のCEDECでは、自身の研究テーマに参考にできそうなセッションや、好きなゲームのセッション、そして興味を持ったセッションを聞きました。中でも特に印象に残ったセッションは、「医師の視点から見る『ヘルスケア×ゲーム』の先進事例紹介と展望」と「トリコの動かし方『人喰いの大鷲トリコ』におけるプロシージャルアニメーション技術」です。

まず一つ目の『ヘルスケア×ゲーム』に関するセッションでは、ゲームが、鬱や大腸がんなど様々な病気を重症化する前に知る、そして改善するための処方箋としての役割を果たす可能性があること、そして医療機関にかかった時と同じ効果が得られたことなど、医者の方から見た効果を知ることができました。このセッションを通して、ゲームにはエンターテインメント性を持ち、楽しみながら症状を予防し、治療をする効果があるという結果が得られたことがわかりました。そして、このことによってゲームが他の分野に活用できる可能性があり、このセッションで紹介された事例から、自身のペットロス症候群研究にどのようにゲーム的要素を入れていくべきか参考になったと思います。

また、『人喰いの大鷲トリコ』のセッションでは、ゲーム中に登場する少年と共に冒険をする生き物「トリコ」をより生き物として表現するかを実際の生き物の動作をもとに、どのように実装していったかという内容で行われていました。特にトリコの首振りの構造や、不自然に思われないような、巨大な生き物が着地する足場の構成など、空想上の生き物をよりリアリティにするための秘訣を知ることができると共に、プロシージャルアニメーションでできることについてよく知ることができました。

最後に今回のCEDECスカラーシップを通して、自身の研究テーマの参考や自身の今後を見つめなおすきっかけになりました。また四日間の短い間の中でゲーム業界の方々の熱意を直に感じることができて、非常に良い経験ができたと思います。今回参加させていただきありがとうございました。