IGDA日本SIG-GameScenarioでは、デジタルハリウッド大学で7月22~23日に開催されたノベルゲームの制作イベント「ノベじゃむ2017」(主催:ノベじゃむ制作委員会)について、主催者の岡田佳祐氏にインタビューをしました。「ノベじゃむ2017」はノベルゲームに特化したハッカソンですので、ゲームシナリオとの関連性はとても高いと考え、その狙いや背景について伺いました。
SIG-GameScenario(以下略)「ノベじゃむ」の具体的なルールを教えてください。
岡田佳祐氏(以下、岡田):全国の高校生・大学専門学生・社会人を対象としたノベル・アドベンチャーゲームの制作大会です。
参加者はチームを組み、主催から与えられたテーマを含む内容のゲームを2日間で制作します。作成するゲームは、ノベル・アドベンチャーゲームであるというアピールができれば、どのようなものでもかまいません。
また「ノベじゃむ」の最大の特徴は、チーム戦であることです。ゲームの完成に不可欠なセクションを一つ以上受け持つメンバー同士でチームを組み、会場でゲーム制作にあたっていただきます。個人で参加するだけでなく、チーム単位での参加も可能です。
セクション
- プロデュースおよびディレクション(企画、進行管理、統括等)
- ストーリー(プロット、シナリオ等)
- グラフィック(キャラクターデザイン、イベントスチルイラスト、背景美術、UIデザイン等)
- 開発(プログラミング、演出スクリプト組み込み等)
- 音声(声優、音楽、効果音等)
--岡田さんのプロフィールを教えてもらえますか?
岡田:早稲田大学文学部を卒業後、日本電気株式会社に入社しました。そこで公共システム開発本部に配属され、大規模自治体向け住民情報管理ソフトウェア開発・保守、プロジェクト管理作業を 4年間経験し退職。その後、日本マイクロソフト株式会社に転職し、メールソフト Exchange Server のテクニカルサポート業務に従事しました。2017年よりアクセンチュア株式会社にてコンサルタント職に就き、現在にいたります。
--主催者として、「ノベじゃむ」を開催する動機、意図を教えてください。
岡田:ゲーム制作が学生を対象とした文化的な一つの活動として成立する可能性を感じたためです。そして団体での創作活動に取り組む学生の育成と支援をしたかったためです。
--今まで開催した「ノベじゃむ」では、どんな人が参加されたのでしょうか?
岡田:一般の高校生、大学生、ゲームの専門学校生徒、そして社会人です。
--「ノベじゃむ」を開催することで、ゲーム業界にどのような影響を与えていくとお考えでしょうか?
岡田:技術の発達やツールの普及によって近い将来ゲームは「遊ぶ」だけでなく、ユーザーによって「作る」ことが身近になると考えています。たとえば音楽にも、単に「聞く」だけでなく、吹奏楽や軽音楽などのように自分たちが演奏して楽しむ文化がありますよね。
特に「ノベじゃむ」ではチーム制という形態をとることで、プログラマーだけではなく、イラスト・シナリオ・声優といった異なったスキルを持った個人が協力できるような仕組みを設定しています。
ゲーム制作が部活動のように、団体でおこなわれる教育的・文化的な活動であること。またそれによって創作活動を志す人が、ひとりでも多く育ち、若者の支援や才能の発掘の場となっていければ良いと考えています。
--今まで「ノベじゃむ」を開催して、すごい作品、心に残った作品はどんな作品でしたでしょうか?
岡田:『月歌美人』(「ノベじゃむ in デジハリ 2016」 最優秀賞 受賞作品)ですね。完成度、製品としての質の高さが非常に印象に残っています。
特筆すべきは、個人参加者同士によって作成されており当日初めて会場で顔を合わせ、企画から2日間で仕上げた作品である点です。メンバーが口々にチーム内のコミュニケーションが上手く行ったことを感想として述べており、団体での創作活動における意思の疎通やコミュニケーション力の重要性を認識させられました。
制作チーム「4/5 メガネP」
- プログラム、シナリオ:双士 創(@tsukuru_soushi)
- イラスト:れお太郎(@reotarox)
- イラスト:アサバ (@illust_asaba)
- 声優:清水 大資(@daisuke_smz)
- 声優:安芸 此葉(@akikonoha)
ーー作品概要について教えてもらえますか?
岡田:物語は主人公である「国宮」の夢の中に和装の女性が登場するシーンから始まります。その夢を皮切りに、彼を取り巻く日常が崩れ始めていくさまを描いた和風ホラー作品です。
全体的なクオリティが非常に高く、通常のキャラ絵に加えて SD キャラまで登場するなど、 2日間で制作されたとは思えない完成度でした。新伝綺をイメージさせるシナリオ部分についても、まさしく読ませる内容になっていました。
タイトル画面も作成されており、中和装と血を纏った白髪の女性キャラの一枚絵からゲームがスタートするのですが、この一枚絵が非常に美しい仕上がりになっていました。
--ゲームシナリオのパートに関して、どのような考えをお持ちでしょうか?
岡田:すべての根幹をなす、非常に重要な部分であると認識しています。特にストーリーを伝えるという部分では、シナリオそのものだけでも作品として成立するため、ゲームの質そのものを左右する箇所であると考えています。
--「ノベじゃむ」作品のゲームシナリオについて、どんな傾向があると思われますか?
岡田:短編作品をあまり書き慣れていない方が多いように感じます。というのも、長編を意識したボリュームのあるシナリオが多く、それを2日間で制作できるボリュームに無理やり短く削ぎ落としたため、不自然な内容になってしまう傾向があるのです。2日間という短い作業期間のため、イラスト、プログラム、音声の各作業者が制作できるゲームのボリュームには限りがあります。そこを考慮できる人。つまりシナリオの分量を抑えた上で、短編として成立する内容を考えられるシナリオライターは非常に少数だと思います。
--今回、専門学校のチームが参加しましたが、どのような印象を持っていますでしょうか?
岡田:学校として非常に熱意を持って取り組んでいただけていることに好感と感謝の念を持っています。またノベル・アドベンチャーゲームを作成する際に求められる様々なスキルを持った人材が、学校に集まっていることと思われます。「ノベじゃむ」を校内で生徒が団結し、切磋琢磨する一つの材料として利用していただけると嬉しいです。
--今後、どんな人に「ノベじゃむ」へ参加してほしいですか?
岡田:より高校、大学、専門学校の学生の皆さんに参加いただけるようになると嬉しいですね。特に校外活動や部活動の大会のようなイメージで、各学校様が定期的な校外活動として捉えていただけると、イベントとしても有機的なサイクルが描けるのではないかと考えています。
また、SNS等で意見が散見されるように、東京だけの開催ではなく、地方の主要都市でも開催し、全国各地の学生が参加できる機会が作りたいと考えています。
--ありがとうございました。