養豚場のオーナーになって豚を育成・出荷する「ようとん場」をはじめ、ユニークなモバイルゲームの開発・配信で知られるジェーオーイーの石川丈氏は第16回「ゲームライターコミュニティ」セミナーに登壇し、自社タイトルの広告マネタイズについて講演しました。
ゲームライターコミュニティはゲームメディアにかかわる人全体を対象とした勉強会です。インターネットの普及で誰もがメディアとなり、情報発信が可能になる一方で、分断されがちなコミュニティを再統合し、知見の共有を進めることを目的に開催されています。第16回は「動画広告の今」をテーマに5月17日に開催され、インディゲーム開発者やゲームライターなど約20名が参加しました。
2013年リリースの「ようとん場」が610万DLのスマッシュヒットを達成したジェーオーイー。これを契機に本格的にモバイルゲームの開発・配信にのりだし、4年間で100万DL以上を記録したタイトルを4本輩出しています。アプリ内課金を行っているタイトルもありますが、収益面の柱は広告モデルです。
もっとも2013年から2017年はカジュアルゲームの広告モデルが短期間で大きく変動した時期です。石川氏は「2013年以前はガラケー時代をひきずっており、バナー広告が中心でした。2013年以後はアイコン広告・ウォール広告・全画面広告と種類が増え、現在はそれに動画広告が加わりました」と説明しました。
ポイントは広告手法の進化と共に1DLあたりのアプリ収益も増加している点です。バナー広告時代は5円から10円が相場だったのが、現在では10円から場合によっては100円に上るものもあるといいます。もっとも、そのためには広告マネタイズを前提としたゲームデザインを心がけたうえで、アプリに広告を組み込む必要があります。
石川氏はこのトレンドの変化を「ようとん場」と「借金あるからギャンブルしてくる」における収益比率の違いであきらかにしました。前者は2013年にリリースされ、バナー広告による収益が全体の75%を占めています。これに対して2016年リリースの後者では広告の種類が増え、中でも動画リワードと全画面広告が全体の70%となっています。
そのうえで「動画リワード広告」「全画面広告」「ネイティブ広告」のそれぞれにおいて、効果的な導入方法が示されました。動画リワード広告では「動画を見てもらうための自然な導線を作ること」。全画面広告では「画面の遷移時など、表示の必然性を作りつつ、遠慮せずに組み込むこと」。ネイティブ広告では「画面デザインに上手くなじませること」がコツだとしました。
ちなみに、この3種類の広告の中でもっともeCPM(1000回表示あたりの収益)が高いのが動画広告となり、平均して1000円から3000円に上ることもあるといいます。もっとも、動画広告は30秒程度ユーザーの端末画面を占有してしまうため、ユーザーに対して動画を再生するための必然性をキチンと提示することが求められます。
これを「借金あるからギャンブルしてくる」では、動画を視聴すればゲームが有利になる(コインが稼ぎやすくなる)モードに突入する仕組みを作ることで対応しました。本作はギャンプルでコインを稼いで借金を返済することがゲームの目的なので、ユーザーにとっても抵抗感が少ないというわけです。