日本ゲーム大賞2016アマチュア部門で大賞を受賞した「Trail」(Project Trail/HAL大阪)が一般公開されました。上昇する煙と加工する煙の二種類の煙をうまく使いながら、仕掛けを起動させてゴールをめざす、PCむけのプラットフォーマーパズルアクションです。
主人公は体から高熱を発しており、草むらの上を移動すると火がつき、煙が立ち上っていきます。煙の流れる様子でステージ構造を把握しつつ、ゴールをめざしていきます。
ステージにはつかんで移動するブロックがあり、煙の流れを変えたり、足場を築いたりできます。上にのぼる煙と下におりる煙を吐き出すキャラクターも存在します。ブロックを動かして煙の流れを変えたり、足場を築いたりすることもできます。
敵キャラクターに接触してもミスにならないなど、基本的にゲームオーバーが存在せず、じっくり考えながらゲームを進められます。ただし、ブロックの動かし方によってはデッドロックが発生することもあるので、詰まったらリスタートしてみるのもオススメでしょう。
ステージ構造(=環境)を変えながらルートを切り開いていく展開にもかかわらず、ステージが暗くて良く見えないという、ある種の矛盾を抱えたゲームデザインです。そんな中、主人公や敵キャラクター、燃え上がる草むらといった発光体によってステージの情報量が動的に変化していくなど、プレイヤーの行動を通してゲームバランスがとられている点が印象的な作品です。
受賞者コメント
名前 吉信 宏輝
担当 リーダー兼プログラマ/チームリーダーとしてコンセプトが引き立つようにゲーム全体の方向性や仕様のコントロールをしたり、制作終盤に作品をブラッシュアップする時間を残せるようにタスクを管理したりしていました。
プログラマが一人だけなので、すべてのプログラムを一人で作成しました。アイデアを素早く固められるようにプロトタイプを制作したり、デザイナーが見た目を調整しやすいような環境を整えたりすることを意識しました。
良かった点 チームメンバー全員で力を合わせて制作した作品が素晴らしい評価を受けたことをとてもうれしく思っております。
工夫した点 UnityのParticleSystemを使わず、シェーダを自作して煙のきれいな表現/高速な計算を行っている点です。
煙が地形に沿って流れる、熱い煙と冷たい煙が衝突すると消える、など煙が他の物体と相互作用を及ぼすので、UnityのParticleSystemを使うことができませんでした。また、数千個の煙に対して、これらの処理を普通に実装すると処理時間がかかりすぎるため、ComputeShaderを使って煙の衝突判定などを高速に計算しています。
課題を残した点 制作が進むほど出てくる実装したいアイデアや改善点をもっと作品に取り込みたかったです。特にステージを作りこむ時間をもう少し用意できればよかったなと思います。
名前 イレネ ヘルセノウイス ハソ
担当 サブリーダー、プランナー、デザイナー
良かった点 チームとして力を合わせたことによって、一人だけで成しえないような作品を作り上げることができ、とても達成感がありました。
メンバーのみんなにはそれぞれ強みが異なり、チーム制作においては、この個人差が相乗効果を生み出して豊かな表現を生むことが出来たと思っています。それがすごく刺激的でした。
工夫した点 煙のリアルな表現を実現するために、自分で使い慣れたツールで実現させ、同じ理屈を使ってゲーム開発で使用していたエンジンに落とし込めるように工夫しました。レベルデザインにおいては、真っ暗なステージの中にプレイヤーをゴールまで導けるように注力しました。
課題を残した点 作業の量が多岐に渡った為、特定の分野に集中して作りこむことができなかったことが今でも残念に思っています。
特にステージの設計やレベルデザインでは、使用できなかったギミックもあり、盛り込むことが出来ませんでした。
プレイヤーが上達することが実感できるように、もっとスムーズにステージの難易度を上げて挑戦する意欲を湧かせるようなデザインを心掛けたかったです。
名前 濱中 謙
担当 グラフィック、アニメーション
良かった点 担当に関係なく皆で意見を出し合いながら、制作が行えたことがとても良かったと思います。
工夫した点 設定した世界観を壊さずに、コンセプトに沿ったデザインになるよう工夫しました。
課題を残した点 ブラッシュアップしたいと感じた素材や、アニメーション全てに手を加えることができませんでした。今後のチーム制作では効率よく作業を行いたいです。
名前 中川 迅
担当 ステージ制作
良かった点 チームの皆で話し合いながらいろんなことを考えれたのでそこが強みになりました。
工夫した点 暗闇の中、煙を頼りにして進んでいくステージなのでどうやってユーザーに理解して進んでもらえるかを工夫しました。
課題を残した点 ステージのレベルデザインがまだ甘くてユーザーに伝わりにくいところもあったので、もう少しわかりやすく工夫すればよかったです。
名前 藤田 勝也
担当 プランナー
良かった点 チームメンバー以外の人にステージを実際に試遊してもらい、アドバイスをもらって改善していけたところが良かったです。
工夫した点 チュートリアルの文字が出てくるところは、煙とブロックの当たり判定で文字を出しているので、いかにプレイヤーに見やすいタイミングで文字を出すかを工夫しました。
課題を残した点 今回の制作では自分の力を十分に発揮できていなかったので、今後このチームで制作する機会があれば、できなかった分まで頑張りたいと思います。
名前 林 克弥
担当 動画制作、BGM、SE
良かった点 誰一人何事もなく、チーム制作が行えたこと。
工夫した点 動画製作において、このゲームの世界観を伝えることに意識しました。文字の表示には、煙を意識した出し方や消え方にしました。
課題を残した点 動画製作で、チームの意見をあまり聞くことが出来なかったり、ギリギリまで時間が掛かってしまったこと。