世界最先端のゲームオーディオ技術をチェック!  SIG-Audio#13 GDC2016オーディオ報告会レポート

    
GDC視察報告会 (講師 : 大久保 博 氏)

大久保氏は 「Real-time Procedural Percussion Scoring in ‘Tomb Raider’s’ Stealth Combat」と 「Audio Bootcamp: Intro and Casual GameDev Overview」の講演内容について報告しました。

Real-time Procedural Percussion Scoring in ‘Tomb Raider’s’ Stealth Combat
[講演ビデオ/会員のみ]

このセッションは「ライズ・オブ・トゥームレイダー」のステルスと戦闘における、リアルタイムプロシージャルパーカッション作曲についての講演です。

本作では主人公の状況がめまぐるしく変化するため、インタラクティブミュージックで良くみられるBGMのクロスフェード手法を用いると、曲の切り替わりが不自然になる恐れがありました。またオーケストラサウンドへの追従も困難だったため、新たにプロシージャルなアプロートで解決を試みたといいます。

はじめに主人公を巡る状況を細かく分類していきます。戦闘シーンひとつとっても、隠れる・近づく・離れる・攻撃するなど様々な状態に分割し、それらの状態によって曲が変化するようにしているとのことです。

また、本作をはじめとした海外のAAAアクションゲームでは、日本のアクションゲームのよに「ボタンを押す」→「攻撃モーション再生」→「ヒット判定」→「敵が倒れる」という処理ではなく、「ボタンを押す」→「ヒット判定」→「判定に応じたモーションが再生される」→「敵が倒れる」という手順で処理がおこなわれています。

このように攻撃した瞬間に結果判定を行うことで、それにあわせた演出が可能になるため(遊技機の入賞演出と同じです)、映画的でダイナミックなカメラ視点の切り替えなどが可能になり、プロシージャルサウンドとも相性が良いと解説されました。

他にも主人公と敵との距離に応じてBGMのテンポを変える(距離が遠くなれば遅くなり、近くなれば速くなる)などの工夫も行われているそうです。

Audio Bootcamp: Intro and Casual GameDev Overview
[講演ビデオ/会員のみ]

本講演はカジュアルゲームのサウンド概論といった内容でした。カジュアルゲームにも「マッチ3」をはじめ、さまざまに細分化されたカテゴリーがあり、ジャンルごとに適したサウンドがあるとのことです。

また本講演ではカジュアルゲームの特徴について、下記のように説明されました。

・カジュアルゲームは「ゲームに費やす時間」では定義されない
・カジュアルゲームは「ゲームプレイのスタイルと消費者層」によって定義される
・カジュアルゲームはインディーズではない
・カジュアルゲームでは20秒(非常に短い時間)でテーマを主張し、プレイヤーを魅惑しなければいけない

このほかカジュアルゲームで利用される典型的な楽器として、マリンバ・シロフォン・ピアノのような鍵盤楽器、ディズニー調のオーケストラ、ギターなどの弦楽器などが列挙されました。

まとめ

今回の報告会はサウンド関係者だけでなく、ゲーム開発者すべてに刺さる内容であったと思います。 ゲームにおけるサウンドの重要さを理解するためにも、多くの方々に参加してほしい内容となっていました。

なお、他2名の講演スライドは下記となります。

(古波倉正隆)