ゲームをドラマティックに演出するために欠かせないゲームシナリオ。
ゲームをもりあげるための重要な要素の一つですが、シナリオを実際にどのように作成していけばよいのか、手順や手法がわからないといった方も多いのではないでしょうか。
講演者に「シナリオ工房 月光」代表でゲームシナリオライターの重馬敬氏をむかえ、東洋美術学校で3月6日に開催された「ゲームシナリオライター勉強会」。
NPO法人IGDA日本のゲームシナリオ分科会による開催です。
ゲームシナリオの作成方法とシナリオとゲームシナリオの違いについて、長年現場で培った経験と共に、テクニックやノウハウを語って頂きました。
【シナリオはどのように作られていくのか?】
会社を設立以前よりゲームシナリオの制作にたずさわっていた重馬氏は、代表作である「LUNAR」シリーズや、「グランディア」シリーズといったシナリオ制作をへて、ノウハウの蓄積の意味を込め、シナリオ作成専門の会社「シナリオ工房 月光」を立ち上げました。
重馬氏はシナリオを作成していくうえで、内容を定めるべく、以下の構成を固めていくといいます。
まず、最初に挙げたのが、その作品の原型アイディアとも言える、「Coverage」です。
例えば映画「スターウォーズ」でいえば、「スペースオペラ」「英雄の帰還」といった、その作品のコンセプトともいえる項目を固めるということです。
次に挙げられたのが、その作品を一行で表す「ログライン」です。
おとぎ話の「桃太郎」でいえば「桃から生まれた桃太郎が鬼ヶ島に行って悪い鬼を退治する」といった具合です。
これはスタッフ間同士で、作品の認識あわせに使用する項目でもあるといいます。
そのうえで「ログライン」の内容をさらに詰めた「あらすじ」をまとめ、「プロット」を元に、4〜8個程の箱に分ける「大箱」、「大箱」のひとつひとつの箱をシーンに分解した「中箱」、「中箱」のシーンをさらなる詳細を詰めた「小箱」と段階を踏んでいきます。
中でもシナリオ作成でベースとなる「プロット」が、シナリオの構造を決定するために作成する、最も重要な要素だと強調されました。
では「プロット」作成を行うにあたり、どのように構成を行っていけばよいのでしょうか。
一般的に「プロット」を作成するに、「起承転結」「序破急」「屈跳捻発」といった、様々な構成方法が存在しますが、その方法では構造単位が大きすぎて、初心者には使いにくいため、重馬氏は「推奨しない」といいます。
また、ハリウッドのエンターテイメントに関わる多くの脚本が参照しているという「シド・フィールドの脚本術」と「ブレイク・スナイダーのビート・シート」についても、注意が必要とされました。
使い勝手が悪こと、そのフォーマットを使っていることで、良いシナリオが書けていると勘違いも起こしやすいこと、などが理由です。
そこで重馬氏が提案するのが、神話のコードをベースにシナリオに置き換えていく手法です。
実際に映画「スターウォーズ」でいえば、「英雄の帰還」の神話コードを踏襲していることが知られています。
重馬氏が関わった「ルナ・ザ・シルバースター」も、「住きて還るもの」の神話コードを踏襲していると説明されました。
神話は人類の根幹を深く描いた物語として、シナリオの強度が高く、ゲームシナリオに盛り込むのは理にかなっているといいます。
重馬氏は「神話コードについて、みんなもっと勉強したほうがいい」と、講演参加者に対してアドバイスを送りました。